個性と安心、2004年日本のガーデニング

※ オールアバウトで掲載終了した記事を再編集しました。内容は公開時のものとなります。

以前から折りに触れて述べてきたことですが、一頃言われたような『ガーデニング・ブーム』は終りを告げました。あの、『猫も杓子もイングリッシュガーデン!』といったブーム(熱病)は、日本に「ガーデニング」という種が蒔かれた時期だったと思います。
そしてこれからは、日本独自のガーデニングが定着していく、いわば成長期です。
では、「日本独自のガーデニング」というのは、どういったものでしょう?そして、2004年のガーデニングは?

【ブームがもたらしたもの】

ガーデニングという言葉がなかった時代でも、家々には「庭」があり、趣味家による「園芸」も盛んに行なわれていました。
それぞれ思い思いに好きな花や木を育てること、あるいは研究することに喜びを感じていた人は少なくないはずです。

ただ、それらは目立たず、ひっそりと行なわれていたように感じます。日本庭園を包みこむような、『静』のイメージが強いものでした。
それが「ガーデニング」という言葉と、あのイングリッシュガーデンが紹介されて、一転『動』へとスイッチが切り替わったようです。
ガーデニングブームの到来です。

このブームは、いままで「できない」と思っていた人たちを、「私にもできるかも」と意識転換させたという点で、とても有意義だったと思います。
「庭」がなければ花なんて育てられない…と思い込んでいた人たちに、ベランダだって、家の中でだって花は咲かせられるんだ、と世の中に知らしめたのですから。
(そこかしこで「庭小人」に出会うのにはちょっと参りましたが…)
ブームにより、花を楽しむ・庭を楽しむ人たちが確実に増えたのです。
そしてブームが過ぎ去り落ち着きを取り戻した今も、花を楽しむ・庭を楽しむ人たちは減りません。「ガーデニング」という種が、日本に根付きはじめたのです。

【日本独自のガーデニング】

ガーデニングブームのおかげで、私たちは様々な楽しみ方を知りました。いままで見たこともなかったような花たちとも出会いました。そして同時に数々の失敗もしました。
露地植えで越冬に失敗した、夏の炎天下で枯らしてしまった、梅雨で病気にしてしまったetc.…

これらの失敗の多くは、日本の気候を考えなかったために起こったものです。
四季のある日本で、イギリスをはじめとする海外原産の植物を育てるには、それなりの知識と技術が必要だったのです。

でも失敗から学ぶ事は多く、日本の気候にあった園芸品種も数多く誕生しました。また、日本古来の植物も再認識されはじめ、新しい植物の組み合わせが生まれるようになりました。
四季を楽しむことができる日本では、いままでガーデニング先進国と言われてきたイギリスやニュージーランドでは見ることのできない庭づくりが可能なのです。

海外のガーデニングショーでは、日本の植物やアイテム、日本庭園が注目されています。
日本人は新しいものを取り入れるのが上手だと言われますが、同時に古いものを大切に思う心も持っています。
「古いものと新しいものとの融合」、そして「四季」がこれからの日本のガーデニングを作り上げていくことでしょう。

【2004年のガーデニングは】

今年、2004年のキーワードはズバリ!「個性(オリジナリティー)」と「安心(癒し)」です。
まず、一つめのキーワード「個性(オリジナリティー)」についてですが、 ガーデニングメルマガVol.93「2003年ガーデニング、大胆予想?!」で、「オリジナリティー(それに伴うジャンルの崩壊)」というキーワードをあげましたが、今年もそれは引き継がれそうです。

コンビニに行けば大概の物が手に入り、テレビにラジオに携帯、インターネットと、ともすれば情報過多というこの時代、求められているのは「個性」です。
これは、「個人ブランド」が注目されていることからも容易にうがかえます。
また、「プチゴージャス」が流行ったことから、「ちょっと高くても、他とは違うものが欲しい」という思いが読みとれます。
これは庭づくりにも反映されるでしょう。
以前のように、どこの庭にも「庭小人」がいるというようなことは、もうないのです。

小さくとも「個性」の感じられる庭、一つでも良いから「オリジナル」のアイテムがある庭…そんな庭が求められているように感じます。
最近、一点もののロートアイアン製サイン(表札)などが売れているのも、「個性」を求めていることの表れではないでしょうか。

そしてもう一つのキーワード「安心(癒し)」ですが、これは昨今の世情を反映しています。21世紀になっても「戦争」は消えてなくならず、ニュースを見れば物騒なことばかりです。この時世に、「家庭」に「安心」を求めるのは至極当然のことでしょう。
また、「園芸療法」にも見られるように、土いじりや植物を育てるという行為自体に「癒し」の効果がありますから、ますます庭が「安心・癒し」の場になることでしょう。

コメント