緑化フェア「TOKYO GREEN 2012」レポート

※ オールアバウトで掲載終了した記事を再編集しました。内容は公開時のものとなります。

フェア概要 

「全国都市緑化フェア」とは、「緑豊かな街づくり~窓辺に花を くらしに緑を 街に緑を あしたの緑をいまつくろう~」を統一テーマとして、年ごとに会場を変えて開催されるものです。29回目の開催となった今回の会場は、日本の中心都市、東京です。
上野公園会場前のコキアちゃん
「全国都市緑化フェア」については、過去にも「やまがた花咲かフェア」、「浜名湖花博(国際花と緑の博覧会と同時開催)」、「おとぎの国の花フェスタinふなばし」とガイド記事でご紹介してきましたが、今回はサテライト会場の数も多く、東京中がフェア会場といった様相になっているのが特徴です。その中からメイン会場の上野、井の頭、日比谷公園と協賛の丸の内中通りガーデニングショーの様子をお伝えします。

「第29回全国都市緑化フェアTOKYO(略称:TOKYO GREEN 2012)」 
上野公園会場のコスモス テーマ「緑の風がふきぬける東京」
会場ごとのマップ
期間─2012年9月29日(土)~10月28日(日)30日間
メイン会場と各会場のテーマ
上野恩賜公園会場───「多様な文化と芸術の風」
井の頭恩賜公園会場──「ふれあいとにぎわい、交流の風」
日比谷公園会場────「都市を彩る生命(いのち)の風」
浜離宮恩賜庭園会場──「現在(いま)に生きる伝統の風」
海の森会場──────「未来につなげる緑の風」
国営昭和記念公園会場─「人間(ひと)をはぐくむ杜の風」
協賛会場/丸の内会場 サテライト会場(約100箇所) サテライトグリーン(8エリア)

アートと癒しの上野恩賜公園会場 

シンボルモニュメント「立つ人」
「多様な文化と芸術の風」をテーマにした上野公園会場、公園口から入ってまず目を惹くのが、シンボルモニュメント「立つ人」。「東北復興への祈りを具象化した」という、巨大なワラの立像です。その下のベンチでは、ちょっと一休みとばかりに腰掛ける人たちの姿がありました。その先には、たくさんの色づいたコキアたちが。鏡面には、コキアちゃんとパンダコキアちゃんが映っています。 

見つけられた?コキアちゃんとパンダコキアちゃん

さらに進むと、そこには広い農園が。『東北「農」の庭 共助のガーデンファーム』です。大根、唐辛子、キク、そして黄金色の稲穂が風に揺れていました。 


シンメトリーに野菜が植えられた
東北「農」の庭

 
都心ではなかなか見られない
黄金色の稲穂の波


「花の噴水」は文字通り、たくさんの花のフロートが広い噴水池を彩ります。また、池の左右に壁面緑化を施された四角い物体があるのですが、これは「しゃぼん玉オブジェ」というもので、15分おきにこの物体からしゃぼん玉が吹き出すのです。花の噴水と相まって、なかなかに幻想的な雰囲気を醸していました。  

水の庭より「花の噴水」


ただの立体花壇のオブジェと思ったら…

 
しゃぼん玉が出る仕掛けでした

東京国立博物館に面しては、「希望の庭 FLORA Planet」が配置されていました。地球を模したこの球体、全体が緑で覆われたすばらしいパビリオンになっていたはずですが、今年の気候は植物たちにも酷だったようですね。それでも、サンパラソルが天に向かって元気に咲いていました。  
「希望の庭」を作るサンパラソル

ここまで日差しサンサンの画像でしたが、中央を走る「農の庭」と「水の庭」の左右には、木々の合間に「五行思想」に基づく「木・火・土・金・水」、そして太陽と月をモチーフにした「七曜の庭」が展開されています。木漏れ日の中、東京藝術大学卒業生等によるアート作品「森のオブジェ」と共に、眺めながら散策するのに丁度良い空間です。  

七曜の庭より、「太陽の庭」のベンチ

またJR線側では、木々の枝から蓄光材がぶら下がっていて、夜になると七曜の庭を照らす天の川が出現する演出になっています。
上野動物園寄りの木陰には、たくさんのデッキチェアが置かれ、花と緑に囲まれて休息を取ることもできる癒し空間が広がっていました。実際にたくさんの方がお休み中だったため、撮影は控えさせていただきました、ご容赦下さい。  

木から吊り下げられた蓄光材

 動物園といえば、こんなオブジェも…ベゴニアの象です。その後ろにはゴリラとパンダ(?)もいましたよ。
ベゴニアの象もお目見え

今回の取材では足を運べませんでしたが、上野公園には「不忍池エリア」として「下町の庭」、「不忍・緑・五景(不忍池水のアート)」を展開するほか、桜並木・花短冊回廊や国立西洋美術館前庭でのハンギングバスケット装飾もあり、会期中たくさんの花と緑に癒される公園になっています。 


ファミリーで、五感で楽しむ井の頭恩賜公園会場 

吉祥寺通りに面した入り口には
大きな花壇が

 「ふれあいとにぎわい、交流の風」をテーマにした、井の頭公園会場。公園自体がとても広いのですが、ここのメインは西園エリアで「三鷹の森ジブリ美術館」側にあたります。
しかし、土地勘のないガイドは吉祥寺駅から公園を目指したため、「井の頭池エリア」から予定外の公園縦断をしてしまいました。本当はバスを利用するはずだったんですけどね……。 でも、お陰で公園内散策も味わえました。  

ボート池や動物園もある井の頭公園は、もともと地域住民の憩いの場として整備されている公園です。小さいお子さんから年配の方まで思い思いの時間を過ごす、そんな場所を会場とした緑化フェアですから、様々な趣向が凝らしてありました。
公園で思わぬ森林浴気分に浸っているときに気付いたのが、こちら。木に吊り下げられた「ウッドチャイム」です。カラコロと心地良い音色を奏でるチャイムは、使われている樹種によって音色も変わり、聴覚を刺激します。  

あちこちでウッドチャイムが軽やかな音を

 さて、目的の「西園エリア」に到着です。このエリアはテーマガーデンゾーン、キッズビレッジゾーン、コラボレートガーデンゾーンで構成。テーマガーデンゾーンには地元小学生による「小学校花壇」、月を知り、学び、感じる「月の庭」、静岡県掛川市の花鳥園出展の「花の庭~生命の館~」、食べられるみどりを使った「食の庭」、そしてガーデンショップ・カフェを併設した「実の庭」、「癒の庭」、「香の庭」があります。 

 

「花の庭」の、天井から長く垂れたテラスライムやディコンドラのハンギングバスケットは圧巻でした!

「香りの庭」の見事な立体花壇 

スパイラル仕立てのコニファー

キッズビレッジゾーンには「キッズビレッジ」、「森のパビリオン」があり、どちらも子どもの五感を刺激する体験型で、ワークショップなども開催。コラボレートガーデンゾーンには「エディブルガーデン」、「クラインガルテン武蔵野」、「貸庭」、「アートガーデン」があり、農の庭やアート作品が展開されています。  


クラインガルテンでは農業や造園系の学生が腕をふるう 

見る、聞く、嗅ぐ、触れる、味わう……日常でありながら、つい忘れがちな「五感を研ぎ澄ますこと」を思い出させてくれる、井の頭はそんな会場でした。

ガーデナー必見の日比谷公園 

日比谷公園会場前の看板
ここ日比谷公園会場では、毎年「日比谷公園ガーデニングショー」が開催されています。ガイド記事では次ページでご紹介する「丸の内仲通りガーデニングショー」と共に、「東京ガーデンジュエリー2005」、「東京ガーデンジュエリーレポート2006」としてご紹介したことがあります。

例年ですと第二花壇にコンテナとハンギングバスケットが並び、その外周でガーデンコンテストが行われていたのですが、今回は緑化フェアと同時開催ということで、公園中をフルに使っての大イベントとなりました。 

■都市のメッセージエリア
日比谷門から入ってすぐに見えるのは、華道家・假屋崎省吾氏演出の「花の泉」です。 


コキアのメッセンジャーたち
いつもはハンギングが並ぶ第二花壇には、たくさんのコキアが。これはコキアに東北の復興応援メッセージを添えて世界地図を作りあげる、「1万人のメッセージガーデン」という参加型展示です。
私が伺った日は、その脇に「コキアでホウキ作り」の看板がありました。こちらは13日に終了してしまったので、ご参考までにガイド記事「コキアで作るミニほうき」をどうぞ。  

復興支援のブースも

このエリアには、他にも非営利出展として震災復興を支援するNPOなどのブースも設けられていました。
手作り品のワークショップを開催し、参加費収益を募金や支援費用に充てるなど、様々な活動が行われています。画像のテントでは、ラベンダーのリボンサシェ作りが行われていました。 


ほかにも、ここ日比谷公会堂側では、プロによるミニガーデンの展示もあります。 

東京都支部造園コンクール支部長賞と人気庭園投票第一位

第二花壇、日比谷公会堂側には壁面緑化が施された、巨大な日時計がそびえ立っていました。

TASHIKANAMONO(緑の日時計) 

 
別角度から 


■風の道エリア
日比谷公会堂近くのフレンチレストラン「南部亭」脇から、霞門を通過して祝田門に至る長い散策路を「風の道エリア」として、ガーデンコンテストとライフスタイルガーデンの出展展示が行われていました。 

ライフスタイルガーデン金賞「“Yo-NoBi”Garden」

ガーデンコンテストは「都市の暮らしを彩る庭」をテーマにした緑化フェアのコンテストで、ライフスタイルガーデンは「美・食・住~暮らしを楽しむガーデニング~」をテーマにした「日比谷公園ガーデニングショー2012」のコンテストになります。

■緑のアートエリア 
東京都知事賞「原っぱで会おう」

ペリカン噴水のある第一花壇側を「緑のアートエリア」とし、「ワールドコラボレートガーデン」、「コンテナガーデンコンテスト」、「ハンギングバスケットコンテスト」が展示されています。
コンテナガーデン出展展示は、「日比谷公園ガーデニングショー2012」によるコンテスト作品です。 画像の受賞作品とスナップ集に載せたライフスタイルガーデンも合わせて見ると、選者の好みがそこはかとなく伺えたりするかもしれません。 

「ワールドコラボレートガーデン」では、チェルシーフラワーショーのゴールドメダリストである石原和幸氏が、世界各国のトップガーデナーから寄せられた被災地へのメッセージを元に東北の里山をイメージして作成した庭が展示されています。石原氏の庭は、「ガーデニングワールドカップ2011レポート」でもご紹介しています。 

水音も優しい「ワールドコラボレートガーデン」

ハンギングバスケット出展展示も日比谷公園ガーデニングショー2012によるコンテスト作品です。秋色の植物を使った作品が多く見受けられました。 

東京都知事賞「月夜の晩には」

 
金賞「山粧う」 

この日比谷公園会場、ガイドは日比谷門から入って第二花壇~霞門~祝田門~第一花壇~有楽門方面へというルートで各作品を見て回りましたが、全体をじっくり楽しむなら優に3時間はかかるであろう見応えのある会場でした。 

丸の内仲通りガーデニングショー2012 

今回は「全国都市緑化フェアTOKYO」の協賛会場として開催された、丸の内仲通りガーデニンショー。第9回目となる今年のテーマは、「花笑み通り丸の内 ~MEET@Marunouchi~」です。18の出展ガーデンとテーマガーデン、ミニガーデンが丸の内仲通りの左右の歩道に展示されるとともに、街灯には約1kmにわたってハンギングバスケットが飾られ、街を彩ります。 


テーマガーデン「なでしこガーデン」

今年のテーマガーデンは、なでしこジャパンで活躍した大野忍選手がデザイン監修をした「なでしこガーデン」です。芝生は、ピッチにも使われていますよね。奥に見えるのは、掴みとった玉座でしょうか。 

ガーデンジュエリー大賞「路地の庭」
 


銀賞受賞作「秋乃花通り」

新人賞受賞「花笑みステーション」 

人も車も往来する街なかで展開されるショーなので、写真撮影には苦労しますが、オフィス街に花と緑があるというのは、とても有意義なことだと感じます。

今回はメイン会場ですら全てを回りきれない、大規模かつ内容も濃いフェアでした。この全国都市緑化フェア、2013年は鳥取での開催が決定しています。ボランティアとして参加する、花と緑に触れに行く、植物を学びに行く……様々な楽しみ方のできるイベントです。皆さんも参加してみてはいかがでしょう。

お楽しみ、ガーデンスナップ集

上野公園会場から 

「金の庭」のドーム、中央の円柱には…

 
万華鏡が仕込まれていました


コリウスとマリーゴールドが印象的な「金の庭」

 
台東区によるミニガーデンの提案展示も 


暖色のジニアやマリーゴールドにユーフォルビアとナデシコの白が効いた、「太陽の庭」の植栽 

「月の庭」のドーム内には、国・地域・民族によって異なる月の見え方があり、画像に写っていたのはバイキングの「水をかつぐ男女」とカナダインディアンの「バケツを運ぶ少女」でした。

「月の庭」のドーム内、奥に見えるのは? 

 
ウサギの餅つき?じゃない…


井の頭公園会場から 

ハーブや野菜で作られた食べられる花壇 

 
小さなスペースもガーデニングや菜園の場に



記念撮影コーナーの植栽も参考に

 
記念撮影コーナーを別角度から 


カモミールの小道 

 
ショップのディスプレイも参考にしたい 



日比谷公園会場から 

和風の庭ではイワシャジンが多く見られた

 
玉石、アイアン、木の皮などが面白い


ライフスタイルガーデン東京都知事賞「大人の秘密基地」


和洋折衷の庭はライフスタイルガーデン「秋景」

 
ライフスタイルガーデンデザイン賞「和魂用栽」


ガーデンコンテスト優秀賞「石と緑の景2012」 

 
ガーデンコンテスト最優秀賞「温故知新」 


ペットボトルを利用したコンテナガーデン

 
ワールドコラボレートガーデンより 


丸の内仲通りガーデニングショーから 

ミニガーデンで見つけた可愛いリース

 
コントラストの強い植栽が人目を惹く



作品「江戸仕草」から

 
壁の丸い穴には苔玉が



東京駅を臨むロケーションのディスプレイ

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