花にまつわるお花し-1

※ オールアバウトで掲載終了した記事を再編集しました。内容は公開時のものとなります。

~Vol.1~☆アマリリス☆(2001/03/23)

アマリリスが我が家に来たのは、引越し仕度の真っ最中。某ハウスメーカーからのプレゼントでした。
箱には色鮮やかな写真、そして中には培養土に球根がセットされたプラ鉢と、育て方が書かれた説明書…。「新居に引っ越したら楽しもう」と、アマリリスはそのまま箱に仕舞われ、物置に置かれたのです。

やがて新居が完成し、あのアマリリスもやっと日の目を見ることに…。ワクワクしながら箱をあけると…なんとそこには、20センチほどの緑の茎葉が窮屈そうに収まっていたのです。
しかも、その先には半分しおれかけた蕾?!
驚くべきことに、アマリリスは箱に仕舞われ物置の片隅でひっそりと、しかし確実に成長していたのです。

もちろん給水などしてないし、光だって物置を開けた時の微かなものだったでしょう。そんな悪条件の中で、球根と土の栄養分だけを頼みの綱に自らの力で花を咲かせようとしていたのです。可哀想なことをしてしまいました。

翌年、再び頂いたアマリリスは、さっそくリビングの窓際に置かれ、やがてピンクの大輪の花を重たげに咲かせました。今まではこの大輪の花があまり好きになれなかったのですが、あの精一杯生きようとする姿を見せられた後では、違う思いを抱くようになりました。

自分の茎では支えられないほどの花をつけたアマリリス。その生命力とたくましさ、そしてなんとけなげなことか・・・。
誇らしげに咲くアマリリスに、そっと「もっと、いばったっていいんだよ」と呟きました。

~Vol.2~☆トラノオと雪柳☆(2001/04/20)

むかーし、私がまだほんの子供だった頃、お向かいの生垣からこぼれんばかりに 咲いていた、白い花の塊がありました。
「おばちゃん、この花何ていうの?」 指差して尋ねた私に、おばちゃんは「それ?『トラノオ』だよ」と答えてくれました。
「ふーん、『トラノオ』かぁ…」確かにダランと伸びた小花の塊は、生き物の尻尾のようでもありました。虎というよりは白猫の尻尾のようでしたが、幼い私はいたく感動したのでした。

かなり後まで私はこの花を『トラノオ』と信じていたので、その花の名が実は『雪柳』であるという事と、別に『トラノオ』という花があるのを知ったときには、少なからずショックでした。

『トラノオ』の名で図鑑を調べると、熱帯植物のリュウゼツラン科『サンセベリア』というものが載っています。こちらは、その葉の形と斑の入り方が虎の尾を連想させるということで名づけられた観葉植物です。
俗にハナトラノオとか、カクトラノオの名で出回っているシソ科の植物なら、庭に植えていたかもしれません。また、ヒメトラノオ・ルリトラノオの別名を持つベロニカは、ゴマノハグサ科の植物で、これも庭植えにできます。
いずれにしても、どちらも『雪柳』とはあきらかに違います。

おばちゃんが何故『雪柳』を『トラノオ』と教えてくれたのか…、単なる覚え違いだったのか、それともあの庭には別に本物の『トラノオ』も咲いていたのか…。
その後、私もお向かいのおばちゃんも別々の地に居を移し、あの庭も家も無くなってしまい、今となっては謎ばかりです。

園芸カタログを眺めていたら、「紅花雪柳」というのがありました。
花が薄紅色をしているのですが、『雪柳』と言う名を冠するにはやはり花は白であるべき…と思うのですが…。

Vol.3~☆薔薇の樹に薔薇の花咲く☆(2001/05/25)

『わらべは見たり、野中の薔薇~♪』と歌にもある薔薇の花。昔々、我が家に咲いていたのはピンクのつる薔薇。花は3~4cmほどのクシャッとした、野趣溢れるものでした。
近所の家にも咲いていたので、ごくありふれたものだったのでしょう。それでも、季節になると薔薇特有の芳香を漂わせ、しばし時を忘れて眺めたものです。

もっとも、私が『飽かず眺む』のは、薔薇の花よりも樹に群がるアリマキ(アブラムシ)だったような気もします。
今でこそ「おのれ、にっくき大敵め~!」と薬剤片手に目を三角にしてますが、当時は害虫なんて意識はなく、ただの観察対象だったわけです。うすく透き通った体を震わせるアリマキたちと、その間をセッセと移動する蟻たち。そこには綿々と受け継がれた生命活動がありました。

その後あまりにも虫がつくというので、つる薔薇は刈られてしまいました。庭には剣弁咲きの朱色の薔薇もありましたが、あまり印象に残っていないのは不思議です。

昨今の薔薇の人気は剣弁咲きからオールドローズを思わせるカップ咲きのものへと変わってきたようです。より強健で耐病性のあるもの、刺のないものなど様々な品種が作り出されている薔薇。中でも『青い薔薇』は、多くの生産者が開発を試みている夢の花です。
近年、かなり『青』に近い品種が作り出されるようになりましたが、この開発競争は飽くことなく続くのでしょう。

何色であれ、また品種にかかわらず、薔薇というのは人を惹き付ける不思議な魅力に溢れているものですね。
今年も咲き誇る薔薇を眺めながら、しばし現実を忘れてゆったりとした時間を過ごしたいと思っています。

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